寒くなるとどうしても精神の調子が悪化してきて、積読の山も積みゲーの山もほったらかして、スマホでかなりどうでも良さそうな作業ゲームをダウンロードして延々時間を浪費するパターンに入ってきてしまう。

どうでも良い作業ゲームの1種として「塗り絵」があって、これまで触ったことがなかったんだけど、ふとアプリストアに並んでるのが引っかかってダウンロードしてみた。内容としてはあらかじめ番号で指定されている色をパレットから選んで、所定のエリアをタップして塗りつぶしていくだけである。梱包材のプチプチをつぶすよりはいくらか脳を使うぐらいの内容だ。

アプリのテーマとしては「癒やし」らしいので、全体に淡い色合いのインターフェースで構成されていて、ステージのロード中にふんわりしたメッセージが表示されるんだけど、「ポジティブなバイブスを集めて……」ってしばらく表示されてから、ステージのロードが完了すると動画広告が表示されるのだ。

これはつまり「ポジティブなバイブスを集めて、肯定的なマインドを組み上げた上で、広告の内容を素直に享受して」ってことになってしまう。しかも今どきのゲームアプリ広告って、「このゲームをクリアできるのは世界で一握りだけです!」と挑戦を煽ったり、「早くこのパズルをクリアしないと、幼子を抱えたシングルマザーが凍え死にます!」みたいなしんどい広告ばっかりだ。

ポジティブなバイブスを集めて、心を開ききったところにこんな広告をぶつけられたら、そのまま窓から飛び降りたくなってしまうんではないか。アメリカだったら訴訟リスクになるんじゃないですか? と不安すら抱く。

どうやら千円弱払うと強制広告を削除できるらしいのだが、塗り絵世界の入場料を払ったか払わないかぐらいで、導かれるルートの落差が大きすぎやないか。

マリア、生誕したイエス、イエスの生誕をおがむ東方の三博士とおぼしき絵
この後、自称「most frustrating game」の広告が流れた

今、スクリーンショットと撮ろうとして目についたステージを開いたら、「イエスの生誕時、東方から三人の聖者がやってきて祝福した」というマタイ福音書のエピソードを引いた絵に、まるで注釈のように「ポジティブなバイブスを集めて……」というメッセージが表示された。

これに至っては神学的な問題さえ生じ得る。東方の三博士のエピソードはマタイ福音書のエピソードだが、ルカ福音書でイエスは自身をこう言い表している。

わたしは、火を地上に投じるためにきたのだ。火がすでに燃えていたならと、わたしはどんなに願っていることか。

(中略)

あなたがたは、わたしが平和をこの地上にもたらすためにきたと思っているのか。あなたがたに言っておく。そうではない。むしろ分裂である。

というのは、今から後は、一家の内で五人が相分れて、三人はふたりに、ふたりは三人に対立し、また父は子に、子は父に、母は娘に、娘は母に、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに、対立するであろう」。

https://bible.com/bible/1820/luk.12.50-53.%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3

福音書のイエスは、明らかに教条的なユダヤ教徒に抗い、蔑まれた人々の側に立ち、やがて十字架上の死を受けるに至った異端者だった。ここに「ポジティブなバイブス」があるとするのは、かなりアクロバティックな解釈を経由する必要があるだろう。

スマホでどうでもいい作業ゲームをやりたかっただけなのに。どうしてこんな神学問題に首をつっこむハメになってしまったのか。

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